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MATURATION PEAK 守り続けてきた熟成の見極め

キリンがウイスキーづくりで大切にしてきたことのひとつが、原酒の熟成ピークの見極め。「富士山麓 シグニチャーブレンド」は、それぞれの原酒が本来持つ特徴や個性を最大限に発揮した、熟成のピークを迎えた状態の原酒を絶妙なバランスでブレンドした 〝渾身の作〟。世界的にも評価されている富士御殿場蒸溜所のウイスキーづくりについて、マスターブレンダーの田中城太が語る。

キリンがウイスキーづくりで
大切にしてきたことのひとつが、
原酒の熟成ピークの見極め。
「富士山麓 シグニチャーブレンド」は、
それぞれの原酒が本来持つ特徴や個性を
最大限に発揮した、
熟成のピークを迎えた状態の原酒を
絶妙なバランスでブレンドした “渾身の作”。
世界的にも評価されている富士御殿場蒸溜所の
ウイスキーづくりについて、
マスターブレンダーの田中城太が語る。

「熟成年数が長いほど“良い”ウイスキー」という誤解

キリンのウイスキーづくりでは、ウイスキー原酒の熟成について、創業当初から守り続けてきた「熟成のピークを見極める」という重要な品質基準があります。それは、熟成年数というのはあくまでも目安であり、原酒ごとの熟成度合いを見極めることこそが本質である、という考え方に基づいています。
一般的には、原酒の熟成年数が長ければ長いほど“良い”ウイスキーと考えられがちかもしれません。しかし、原酒の熟成には、原料や製造方法はもちろん、樽熟成させる前の蒸留液の組成、樽詰アルコール度数、樽の種類、熟成庫の環境など、さまざまな要因が影響します。だからこそ、ひとつひとつの原酒は、たどる熟成の軌道が異なり、熟成のピークに達するタイミングも異なります。本来持っている特長や個性が最もよく表れている円熟期の状態を「マチュレーションピーク」と呼び、キリンでは、このマチュレーションピークの見極めを重要な品質基準のひとつとして、大切にしてきました。

キリンが大切にしてきた「マチュレーションピーク」の見極め

ウイスキー原酒の熟成は、多くの要因が絡み合うため、マチュレーションピークはひとつひとつの原酒で異なります。原酒には、人間のように、それぞれにまったく違う特長や個性があるのです。
そのため、熟成年数にとらわれることなく原酒のピークを見極めるのは、簡単ではありませんし、品質を左右する重要なポイントです。だからこそ、キリンのウイスキーづくりでは、手間を惜しまず経験を積んだ熟練のブレンダーが熟成状態を見守り、マチュレーションピークを見極めることを重視してきました。
熟成のピークの状態は2年ほどのものから、10年程度の長い期間に及ぶものもあり、原酒タイプや製造法によって異なります。そのため、これまでの経験値から熟成のピーク期間を予測しつつ、個々の原酒の熟成状態をテイスティングしながら、そのピークを見極めます。熟成のピークを過ぎるとすぐに品質が劣化するわけではありませんが、香味的特長が弱まり、削ぎ落ちてゆきます。
熟成のピークを過ぎた原酒も、その使い方、目的、目指す味わいによっては、ブレンデッドウイスキーにはなくてはならないものです。一方、富士山麓 シグニチャーブレンドのコンセプトは、「熟成のピークを迎えた原酒のブレンド」です。ピークを過ぎた原酒は使用せず、熟成のピークにある原酒のみを使うため、そのタイミングを見極めるのに、多くの時間と注意を払いました。

「富士山麓 シグニチャーブレンド」のコンセプト

富士山麓 シグニチャーブレンドは、熟成のピーク「マチュレーションピーク」を迎えた原酒を厳選し、絶妙なバランスでブレンドした、ブレンデッドウイスキーです。
原酒本来の特長や個性を活かすようにバランス良くブレンドしているため、それぞれのフレーバーの要素が鮮やかながら、複雑で奥行きのある円熟した味わいとなっています。洋梨やオレンジピールを想わせる、フルーティで華やかな香り、焼き菓子のような甘く芳ばしい風味など、ひとつひとつの香味要素がしっかりと感じられながら、折り重なるように複雑で奥深い味わいが、長い余韻をともなって心地よく続きます。

多彩な原酒へのこだわり

「富士山麓 シグニチャーブレンド」だけでなく、同じ富士山麓シリーズの「樽熟原酒50°」など、富士御殿場蒸溜所のブレンデッドウイスキーには、他の蒸溜所とは違った味わいがある、とよく言われます。これは、富士御殿場蒸溜所が、モルトウイスキーだけでなく、グレーンウイスキーも香味タイプの異なる多彩な原酒のつくり分けにこだわってきたからこそ実現できる味わいなのです。
フルーティなモルト原酒だけでなく、バッチ式蒸留の芳醇なグレーンウイスキーと、アメリカのバーボンと同じつくり方をしている甘く華やかなグレーンウイスキーも味わいの鍵を握っているのです。
多彩な原酒のつくり分けは、「マチュレーションピーク」の見極めと同様に、キリンウイスキーが創業当時から大切にしているこだわりです。それぞれが異なる特長や個性を持つ、多彩な原酒の熟成のピークを見極め、絶妙なバランスでブレンドすることで、複層的で奥深く、気品のある味わいに仕上げています。

世界が認めたキリンのウイスキーづくり

多彩な原酒のつくり分けと個々の原酒の特長や個性を活かしたブレンドにこだわってきたキリンのウイスキーは、国際的にも評価をいただけるようになってきました。
「富士御殿場蒸溜所 シングルグレーンウイスキー AGED 25 YEARS SMALL BATCH」は、「WWA2017」において、「ワールド・ベスト・グレーンウイスキー」を受賞。また、お蔭様で私自身も、「IOW2017」の「マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー」世界最優秀賞という栄誉ある賞 をいただくことができました。
これらの受賞は、創業開始以来45年間、キリンのウイスキーづくりに携わってきた人々の英知・技術、そして情熱の賜物です。一般的にシングルモルトに関心が集まりがちですが、ブレンデッドウイスキーが改めて評価されてきた現在、味わいの鍵となるグレーン原酒が世界的に注目されていることもあり、富士御殿場蒸溜所が培ってきた技術や多様な原酒の価値が評価されたのではないかと感じています。

※「IOW 」
ウイスキー専門誌『Whisky Magazine』を発行する英国パラグラフ・パブリッシング社が主催するウイスキー・アワード。毎年、世界のウイスキー業界に多大な貢献をしたメーカーや蒸溜所、人物、小売店などを表彰する。
※「WWA」
「IOW」と同じく、英国パラグラフ・パブリッシング社が主催するウイスキーコンペティション。ウイスキーの味を競い合うテイスト分野では、公平性を期すため、審査員に詳細がわからないように、すべてブラインドテイスティングによって審査が行われる。2017年度のテイスト分野には世界各国から550銘柄のエントリーがあり、そのなかから13カテゴリーでワールドベスト・ウイスキーが決定した。

世界中のお客さまに愛されるウイスキーを

国際的な賞を受賞したことで、海外から問い合わせやお誘いが増えており、海外のマスターブレンダーやディスティラーとのコラボレーションの可能性や、海外展開など、夢が大きく膨らんでいます。これからもこの賞に恥じることのないように研鑽を重ね、世界中でキリンウイスキーが人々を魅了し、感動を与え、愛されることを夢見て、魅力あるウイスキーづくりに魂を込めて取り組んでいきたいと思います。

キリンビール株式会社 マスターブレンダー 田中城太

1962年、京都府京都市出身。1988年、キリンビール株式会社に入社。
1989年にナパバレーのワイナリーに勤務後、カリフォルニア大学デービス校大学院修士課程を修了。
1995年に帰国し、ワイン・その他の洋酒業務を担当する。
2002年に再度渡米し、ケンタッキー州のフォアローゼズ蒸溜所にてバーボン製造および商品開発全般に携わる。
帰国した2009年からは、キリンビール商品開発研究所でブレンダー業務に従事し、2010年にチーフブレンダーに、2017年にはマスターブレンダーに就任。
同年、「パラグラフ・パブリッシング社」が主催する世界的ウイスキー・アワード「アイコンズ・オブ・ウイスキー(IOW)2017」において「マスターディスティラー/マスターブレンダ―・オブ・ザ・イヤー」を受賞。

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